八月に咲く

阿部顕嵐くん

制服夏祭り

なんで受験って高校生最後の年にあるんだろうね?と愚問を重ね重ね、浴衣も水着も線香花火も諦めた。

夏休みといっても受験生なので、毎日朝から学校にいって夜まで勉強。友達と食べるお弁当と友達といく帰り路だけが癒してくれる。時々外食するのが唯一のイベント。

特定の仲良しを作らずあちこち放浪しながらうまいことやってきた私とはいえ、やっぱり気の合う仲間がいるのはこういうときに心強い。

 

前々から何人かで話をしていた。遊べない夏なんてくそくらえ!1日くらい、遊んだっていいじゃないか。でも花火も海もだいぶ後ろめたい。だったら夜帰りに近くのお祭り寄らない?さんせーい!、と、いった感じで。

 

みんなもう3年着古した制服を脱ぐのが惜しい惜しいといって、事あるごとに(たとえばオープンキャンパスとかでは)制服を着たがる。私もそう。永遠にこれをまとって街の中で輝いていたい。去年の文化祭で汚したスカートは間違いなく一張羅だ。

 

屋台が立ち並び、綺麗な浴衣美人とその彼氏や、それから無理やり浴衣を着せられた子供たちとその親の入り乱れる中で。制服を着た私たちが一番美しかった。と思う。

 

私は、いつもよりみんなの少し後ろを歩いていた。みんなの背中は、"JK"として最強の美しさを誇っていた。

ひとりが、海子、ついてきてる?と私をばかにするように言う。そうするとみんな振り向いて、いるいる、よかった、ふらふらしちゃだめだよ!と笑う。人に知られで、私は泣きそうになる。

 

不安と焦燥のカオスの中で、秩序をたもって歩く私たち。大好き!とか最高の友達!なんてよくある女の子の仲良しではないけれど、何も言わなくたって、なんとなく、分かる。

 

どうか、みんなの夢が叶いますように。

 

制服を脱いだ私たちも綺麗でありますように。